山が消えた
私の通勤路は水田が開けた中を通っているが、その途中に直径百メートル、高さ十数メートルほどのお椀を伏せたような山があった。水田の中にポツンと一つ孤立した山のあるのが不思議で、私はそれが古墳か何かではないかと思っていた。
ところがそうではなかったらしい。ある日、この山の木がすっかり切り倒された。その少し後にこの山の頂上にショベルカーを見かけたのだが、その日からみるみるうちに山は削られ、またたく間に完全な平地になった。そして、今ではそこに広い教習コースを持った自動車学校ができている。
こんなことをして本当にいいの?と思う。私は数年間その近くの道を走っていただけだが、それでもこの山には愛着があった。まして、地元の人たちはこの山がなくなったことに、相当の寂しさを感じているはずだ。
小学生の頃、日本は山国で耕地面積が狭いと教えられて、それなら山を切り崩して海を埋めればいいではないかと思っていた。まさにそういうことが行なわれたのだが、もう小学生ではない私の思いは複雑である。
私の勤務校の近くに伊吹山という山があって、学校の窓からも見えている。標高千四百メートル、県内ではいちばん高い山だ。ところがその山で石灰岩の採掘が行なわれており、山の片側の斜面がザックリと削り取られたようになっている。日々その姿を見ると痛々しさを感じざるを得ない。将来この山がどうなってしまうのかということも心配だ。
これも狭い日本にあっては現実離れした感傷なのであろうか。
平成風景点描
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