2023年1月30日月曜日

              哀しき大道芸


 今、彦根の商店街は『えびす講』という年末恒例の大売り出しの最中である。そこで私もこどもを連れて出かけてみたら、ちょうど『懐かしの大道芸大会』というアトラクションが始まるところで、たくさんの見物人が集まっていた。そこで私たちも露店のテントが立ち並ぶ冷たいコンクリートの道路に腰を下ろしてそれを見物することにした。

 始めに登場したのは、半ば頭の禿げた風采の上がらぬ中年男である。彼は風呂用の洗い桶をとりつけたヘルメットをかぶり、道路に転がした同じ型の桶を蹴り挙げてヘルメット上の桶で受け止めるのだ。うまくいけばスポッとはまるのだがけっこう失敗も多い。二十個ほどの桶を蹴り上げた中での成功率はほぼ三分の二くらいだった。洗い桶という生活臭ふんぷんたる小道具、それを付けたヘルメット姿の異様さ、そしてちょっと低すぎる成功率など、何から何まで哀しかった。

 疲れきったような姿勢で道端に座っていた女性が次のだしものの主役だった。厚化粧のため表情も年齢も分からない。自分の番になると彼女はきびきびと踊りだしたのだが、私のまぶたの裏には先ほどまでの彼女の疲れきった様子が残っていて、その活発な動きがむしろ痛々しく感じられた。

 私が小さい頃見た『大道芸』は華やかに輝いて見えたものだが、あれは錯覚だったのだろうか。それとも私たちの目が華やかなものに馴染みすぎたのだろうか。あるいは今日の『大道芸』が水準以下だったのだろうか…。私はこどもに見せてはならぬ物を見せたような後ろめたい気分で帰途についたのだった。

平成風景点描

  草むらの凶器  赤ちゃんに缶コーヒー  山が消えた  無礼な奴

  横暴な客  不信の社会  哀しき大道芸

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