美しい九月の朝に
それは九月初めのきれいに晴れた朝、出勤途上でのことだった。田園の中の広い道を走っていると、道路の真ん中に数羽のカラスが群れていたのだ。私は車のスピードを落として近づいたが彼らはまるで飛び立つ気配がない。仕方なく私はその五メートルほど手前で車を止めた。
見るとカラス達はテニスボール大の白いものを奪い合っている。私は何だろうと思いつつ車から降りて近づいたが、カラス達はそれでも逃げない。二メートルほどの距離に近づいたとき、私はようやくそれが小猫であることに気づいた。小猫はニャーニャーと悲鳴を上げていたが、カラス達はそんなことにはまるでお構いなしに、この獲物を独占しようとして周囲から引っ張りあっているのだ。私はあわててカラス達を追い払った。
見ると小猫の両目はつぶされて真っ赤な血に染まっていたが、その外には目立った外傷はなく足どりも確かである。この猫をどうしようかと、私はしばらく迷った。私が拾って手当をしてやれば命をとりとめるだろう。だが、もしこのまま放置しておけばまだ未練がましく上空を飛び回っているカラスの餌食になるのは間違いない。……しかし、とりあえずこの場を救ったとしても、私がこの猫を将来に渡って飼うわけにはいかないのだ。
結局、私は小猫が道ばたの草むらの中へ身を隠すのを見届けてその場を後にした。車を発進させてからも、まだカラスが舞い降りてこないことをバックミラーで確かめながら走ったが、悲劇の現場は急速に視界から去り、車は市街地に入っていったのだった。
生命の四季
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