恋の季節
数日前、車を運転していたときのことである。郊外の信号で止まってふと気づくと、すぐ前の横断歩道の上でスズメが羽根をバタバタさせている。ケガをしているのだと思い、このままでは車にひかれるから横へ移してやろうと、車のドアを開けて降りかかった。
するとスズメは急に飛び立ってすぐそばの歩道におりた。見ると、なんと二羽なのである。ケガしていたのではなく、交尾の真最中であったらしい。恋の季節が到来したのだ。
翌日、強風注意報が出て、風速十何メートルかの風が吹いた。家の窓からぼんやり眺めていると、その強い風の中を、スズメらしい鳥が、何か小さな黒い小物体のように飛ばされていくのが見えた。このあたりの樹々はほとんど落葉樹で葉を落としたままなのだが、こういう日に、スズメがどんなところにいるのか、私は知らない。
そして、またその翌日、今度は朝から雪が降った。しかし、雪はすぐにやんで晴れわたり、真白になった遠くの山々がくっきりと見えた。周囲がまぶしいほどに白いだけに、あっちこっちと飛び回るたくさんのスズメの姿が目立ち、にぎやかな鳴き声が聞こえた。
不思議なもので、普段はその存在さえ気に止めていないスズメなのだが、一度意識してみると、その後やけに目立ち、何かいとおしさに似たものすら感じられる。
しかし、春夏秋冬と季節がめぐり年がたっていく中で、スズメは人に見られようが見られまいが自らの営みを続けている。それはもう何十万年も続いてきたことで、今また春になったという、それだけのことである。
生命の四季
恋の季節 水ぬるむ 干上がる川で 色即是空 美しい9月の朝に
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