水ぬるむ
水ぬるむというのは、早春をあらわす季語だそうだ。しかし『ぬるむ』ということばの語感は、むしろ今の季節にふさわしいように思う。今日、四月五日、近くの川辺に散歩に行ったら、このことばがぴったりと当てはまるような情景に出会った。
芹川という川幅が二、三十メートルの川である。水はよく見ないとわからないほどゆったりと流れ、その表面に細かい藁クズのようなゴミが浮いていた。空は晴れ渡ってほとんど風もなく、穏やかな日の光が川面を照らしている。岸辺ではタンポポやスミレが咲き始めている。こんな日は、川面に浮かぶ藁クズさえ好ましく思われるものだ。
川の真中あたりには百羽ほどのカモが群れをなしていた。冬の頃は見かけた記憶があまりないので、ちょっと不思議な気もする。散歩に連れていった犬がしきりにそのカモに向かって吠えるのだが、カモの方は一向に気にする気配もなく悠然と水に浮かんでいる。
最初は気付かなかったが、よく見るとカモは二羽づつ行動をともにしている。一羽はやや大きく茶色や青色の羽根の色が鮮やかで、もう一羽はやや小さく地味である。小石を拾って近くのペアーに投げたら、仲良く連れだって飛び立ち、しばらく一緒に飛んだ後に少し離れたところに降りた。それがおもしろくて何度か同じことを繰り返した。
そうしながら、こんな事をしているとどこかの教育ママが眉をしかめるかもしれないと思った。しかし、私が投げた石は共に春を生きる仲間であるカモ達への親愛の情を込めた挨拶なのである。
生命の四季
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