2023年1月29日日曜日

              ドラゴンと龍


 私の読んだ外国の絵本の中に、何冊かドラゴンの出てくるものがある。ドラゴンは普通龍と訳されるが、絵本のドラゴンは我々の思い描く大蛇に足をつけたような龍のイメージとは程遠い。図体の大きな四つ足の草食恐竜に、とうてい空など飛べそうもないような貧弱な羽根をつけた姿をしている。

 ドラゴンと龍の共通点と言えば、せいぜいどちらもハ虫類をベースにした架空の動物だということくらいであろう。他にどちらも空を飛ぶということもあるが、ドラゴンは羽根をはばたいて飛び、龍は空を泳ぐのだからずいぶん違う。一体なぜドラゴンが龍と訳されるようになったのか不思議なくらいだ。それでも、何の抵抗もなくドラゴンは龍と訳され続けてきた。絵本なら読者は絵によって原作者のイメージを理解することができるが、一般の書物では読者と原作者のイメージはすれ違ったままで終わりかねない。

 いや、実はこのズレはその姿形だけではないのだ。中国や日本では、龍は特別に優れた力を持ち、縁起の良いものの象徴とされている。それに対してキリスト教文化圏ではドラゴンは邪悪と罪の象徴だそうである。その象徴するものまでがこのようにほとんど正反対であってみれば、ドラゴンを龍と訳して文学が成り立つというのはおかしな話だ。

 昔、第五福龍丸が水爆実験の死の灰を浴びて乗組員が死亡するという事件が起きた時、ベン・シャーンは『ラッキードラゴンシリーズ』という連作の絵を発表した。この名称は船名の直訳ではあるが、彼がドラゴンにどんなイメージを持っていたのか、興味あるところだ。

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