2023年1月29日日曜日

              エンタメ殺人事件


 最近やや下火になったような気もするが、ひと頃、『○○殺人事件』というタイトルの推理小説が続々と出版された時期があった。私がすぐに思い出すのは列車名を冠したシリーズだが、そのほかにも同様なシリーズものが何種類も出版されていた。私自身はこの種の小説を読んだことはないが、それを原作とするTVドラマは何回か見た。

 この種のドラマは、要するに視聴者の俗物的なノゾキ趣味を満たすとともに、『殺人』の持つインパクトの強さで話をもたせているだけのものだ。たしかに人が殺されるということは大変なことで、まして連続殺人ともなればそのインパクトは強い。だからたとえ人物描写が類型的であろうと、文章や演技に説得力がなかろうと、それなりに読者、視聴者は獲得できよう。しかしそれはあくまでも書く側、作る側の都合である。そんなことで次から次へと『殺人事件』のシャワーを浴びせられる方はたまったものではない。

 とはいうものの、現代がその種の小説やドラマを大量消費する社会だということもまた事実である。そうした作品によって我々が現実の『殺人』に不感症になるとまでは思わないが、人の死ぬ話がエンタテインメントとして受け容れられている今の状況にはやはり空恐ろしいものを感じる。

 聞けばこどもたちの間でも『殺人事件』を扱った『推理マンガ』が大変な人気らしい。それも江戸川乱歩の亜流のような、おどろおどろしい作品が、である。殺伐としたいやな世の中になってきたとつくづく思う今日この頃である。

(収録時に、「エンタテインメント殺人事件」より改題)

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