『モモ』のどこがいいの?
滋賀県の高校生に配られる読書案内の中に推薦図書として『モモ』が載っているのを見て、私はため息をついてしまった。以前、この本が話題になっていた頃、私も読み始めたが、最後まで読み通す価値もないと途中で捨ててしまった記憶がある本なのだ。
時間に縛られて誰もがゆとりのない生活をしている現代、モモという名の女の子が『時間どろぼう』と戦って自分の時間を取り戻すというこの物語は、一応、現代文明批評の寓話という体裁を取っている。しかし、私には『古き良き時代』へのノスタルジアと、慌ただしい生活の中で人間性を失いがちな現代人に関する聞き飽きたお説教と、『時間の花』などという神秘主義的な虚構と、『時間どろぼう』との戦いという三流アクションのゴッタ煮としか思えなかったのである。
私にはこれのどこが面白いのかさっぱり分からなかった。しかし中には熱烈な支持者もいたようで、書店でこの小説を逐条解説したような本を見た記憶もある。おそらくこの本の毒にも薬にもならない文明批評が世の説教家や教育ママ層に歓迎され、誰もその中身を正当に評価する見識を持たないまま、軽薄なブームとして広まったのだろう。それにはこの本が知的権威の権化のような岩波書店から出版されたという事情も関係していたに違いない。…と、私は思っていた。
ところが、最近、私はこの小説が別の意味で気になりだした。その神秘主義的な部分がオカルト志向の現代にマッチした可能性もあると気づいたのだ。これを高校生に薦めた先生方はこの指摘にどう答えるのだろうか。
文化って何だ
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