日本の負債
マルクス経済学に『本源的蓄積』という概念がある。資本にものをいわせて労働者を低賃金で働かせ、彼らが生産した価値の一部を資本家が『合法的に』掠め取るのが『搾取』だが、そうした資本主義社会が形成される前に権力者が弱者の財産を力づくで奪い取って『資本』を形成した過程があり、それを『本源的蓄積』というのである。
そういう観点からすれば日本のアジア侵略も『本源的蓄積』の過程であったと言える。戦後、アジア諸国の復興が遅れたのに日本が脅威的なスピードで経済成長を遂げたのは日本人の優秀性を示すものと言われるが、それは違うだろう。実際のところは戦前の『本源的蓄積』によって日本国内に資本が形成されており、本土が戦場にならなかったおかげで社会基盤も生き残っていたからだ。それに引き換え、アジア諸国は日本の侵略によって民族的な『資本』も経済活動を支えるべき『社会基盤』も破壊されていた。
最近、従軍慰安婦問題など、戦前・戦中に日本がアジア各地で行った不当な行為についての検証が進められつつある。もちろん、そうした具体的な事実についての実証的な究明と償いも大切だが、日本のアジア諸国に対するより大きな負債は、日本の『本源的蓄積』のために彼らの富を略奪し、伝統的な社会組織を破壊してその社会革新の機会を圧殺したことである。もしこのような負債を経済的に見積れば、その額はおそらく天文学的な数字になるに違いない。最近、戦争責任論は賑やかだが、こうした論点がほとんど見られないのは、不思議なことである。
ああ、日本人
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