女どうし
ムーの妊娠がいよいよ間違いなくなってきた。これまで毛に包まれて見えなかった乳首が大きく赤く目立ってきたし、こころなしか体も大きくなったように思われる。散歩に連れて行っても動きが鈍く、やたらと道に座り込んだり草の根を掘ったりする。お相手は九月末に私たちが交尾しているところを見つけた白い大きな犬に違いない。
ムーが妊娠しているとわかったとたん妻が急に優しくなった。それまではどちらかと言えば妻よりも私の方がムーに優しくしていたのに、最近では妻が『犬小屋を外に置いたままでは体が冷えるのではなかろうか』などと気遣いを見せている。ドッグフードに金をかけるのを渋っていた妻が、高価な缶詰のドッグフードを買ってくる。
そういえば交尾の直後に『もし妊娠していたら、中絶できないだろうか』と私が言ったとき、『そんなことはかわいそうだから産ませてやって』と言ったのも妻だった。やはり女どうしだと感心したものである。
先日、妻がムーを散歩させていたら、交尾のお相手の白い犬と出会ったそうだ。ところがその犬はムーには全く関心を示さず、さっさと行ってしまったという。妻は義憤にたえないという面持ちでそのことを話し、小学校五年生の長女に『人間も同じだよ。自分だけいい目をみたら後は知らん顔という男が一杯いるから、だまされたら駄目だよ。』などと言っている。長女がどこまで理解したのかはわからないが、私は『なんと大胆な性教育』と度肝を抜かれてしまった。男には入り込めない女どうしの世界である。
五人と一匹
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