ムーの出産
ついにムーが三匹の仔犬を産んだ。昨夜九時頃のことである。
そのとき私は次男とともに風呂から上がった直後だった。不意に『ムーが赤ちゃんを産んだ!』という妻の叫び声が聞こえたのだ。 その声に家族みんなが犬小屋へ駆け寄った。するとムーが土の上にうずくまり、その足の間にまだ羊水に濡れたままの黒っぽいずんぐりとした仔犬が見えた。ムーは頭だけ持ち上げてしきりに何かしているが、暗くてよくわからない。しばらくして『ムーがヘソの緒を噛み切っている!』とその動作の意味に気づいたのは長女だった。私たちはしばらくムーと仔犬を観察した後、家に入った。
妻は興奮気味に長男を抱きしめて『私もおまえたちを産んだときのことを思い出した。大事な体を叩いてごめんね!』と言う。長男の勉強を見てやっていた妻は、長男がしばらく前に習ったかけ算のやり方を忘れていると怒って長男の頭を叩いたのだそうである。ムーの出産のおかげで、長男の勉強の続きはなし、無罪放免ということになって、私たちは揃って寝床に入った。
さあ、眠りにつこうかという頃、またムーの苦しげな声。私たちは寝床を飛び出してまたムーの周りに駆けつけた。すると、案の定二匹目が生まれていたのである。私たちはまた『かわいい、かわいい!』と、ひとしきりムーと仔犬を賞賛した後、寝床に戻った。
『ああ、僕、興奮して今夜は寝られそうにない。』と長男が言った。しかし、それから十分ほどして三匹目が生まれたとき、長男はぐっすりと眠っていたのだった。
五人と一匹
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